Csunの日記

本好き📖*

ハンバーガー1 個分で憲法を-童話屋さん『日本国憲法 付教育基本法(新・旧)/ 英訳日本国憲法』

童話屋さん2001年刊「小さな学問の書 」シリーズの1冊目。

こんな小さな本が、ちゃんと出版人の心意気を醸し出していたような。

懐かしいですね、たった80ページの文庫サイズの本が、本屋さんのレジ横に置かれていました。あっちの本屋さんにも、こっちの本屋さんにも。当時の消費税込みでぴったり300円、たった300円の本のためにレジ横を空けてくれたんですね。

日本国憲法(英訳付)と教育基本法、まえがき見開き1ページのシンプル編集。厚さ5mmほどの文庫サイズ。この小ささ、薄さ、シンプルさが素晴らしい。


編集:田中和雄さん

童話屋さんの創設者の方です。もともと童話屋書店として出発したのを、安野光雅さんからの出版依頼がきっかけで、あれよあれよという間に(?)出版をするようになったそうです。

書店を始めたのは、「子ども心に憧れた」過去があったから。だからでしょうか、子ども向けの本を扱っていました。

そして、特に詩に縁があったわけでもないのに、谷川俊太郎さん、茨木のり子さん、まどみちおさん…そうそうたる顔ぶれが出入りするように。すごいですね。これぞマンパワー!ちょっとした文化交流の場が出来上がったということですね。出版社になってからは詩集も出しています。『ポケット詩集』など私も何冊がお世話になりました(*^^*)

↓当時のエピソードなど
www.tokyo-np.co.jp

↓「店に飛び込んできた」安野光雅さんと制作した本。出版社・童話屋誕生のきっかけ。
www.dowa-ya.co.jp

ちなみに、今でもパソコンやメールと無縁でいらっしゃるそうです。

上記「紙、消しゴム、鉛筆だけ『童話屋』創業者・田中和雄さん」の記事を執筆した記者さんは、「『ポケット詩集』をコラムで取り上げたら、見ず知らずの田中さんから礼状が届いた。手書きの丁寧な文面から『他者との縁を大切にする人だな』と感銘を受け」と記しています。素敵な交流です(o^^o)

企画

2001年、ちょうど憲法改正問題が盛んだったころの出版です。子どもたちが憲法を読んで自分の頭で考えてくれることを願っての企画でした。

お役所に行っても、日本国憲法のパンフレット一つ置いてあるわけもなく「国会図書館にあります」って。となると六法を繰る?そんな大変な思いをしなければ読めないのか?ということですね。言われてみればそうですね。今はインターネットでいつでも引き出せますけれど、日本のインターネット普及率、2003年時点でもようよう60%でした。

www.at-s.com

ハンバーガー基準の定価

もともと想定した読者層は小・中学生だったとのこと。子どものお小遣いで買える限度を調べて、「ハンバーガー1個分の値段」に白羽の矢が立ったそうです。当時の消費税5%込みでちょうど300円。

子どもが100円玉を三つ持って「憲法ください」と来たら本屋さんがどんなに喜ぶだろう、子どものポケットに入ったらどんなにすてきだろう、と夢見たんです。

素敵な感性!

初版10万部…重版

「10万冊ずつで行こう」と言ったら、会社のみんながシーンとなって、おかしなものを見るような顔になった

10万部“ずつ”というのは、『あたらしい憲法のはなし』と同時刊行だったからなのですが、『日本国憲法』だけで10万部を刷ろうと思ったそうです。3000万人くらいに読んでほしいと。当時、初版といったら2〜3万部だったそうですから、社の皆さんの「?」も推して知るべしですね^^;

そして、この10万部、なんと3ヶ月で重版となったそうです。

童話屋さんの 読者カード

童話屋さんの本に縁があったらぜひ見てほしい読者カード。名前や住所の欄は漢字なのに、感想を書くところには

「おたよりを、どうぞ。」

小さい子が書くことも想定して、いや、小さい子どもにこそ書いてほしい編集部の気持ちがこんなところに表れています。

子どもが大人に「ここに感想書くのよ」と教えてもらって書くのではダメなんです。子どもに直接「おたよりを、どうぞ。」とコミュニケーションを取りたい気持ち。私にはそう思えます。

教科書で要所要所は習ったけれど、この本がなかったら憲法はもっと遠いものだったと思います。薄い本だけれど、本棚で見失うことはありませんでした。また改めて読んでみます。ありがとう(*^^*)

書籍データ

題名:『日本国憲法
編纂:童話屋編集部
版元: 童話屋
発行日:2001年2月26日
サイズ:A6
頁:80頁
定価:286円+税