Csunの日記

本好き📖*

ちょっとだけモードの世界の住人に…山本耀司さん『服を作る - モードを超えて』

本の佇まいが、「ライトに読めるけれど…深いよ!」という雰囲気に満ち満ちていました。シンプルな、というか引き算の美しさを発揮していて、丁寧に作ってもらえた本なんだなぁ、と。聞き手の宮智泉さんも素晴らしかったです。


山本耀司さん

Yohji Yamamotoofficial siteに「プロフィール」、載っていないんですよね(見逃しているだけだったらどうしましょう^^;)。美の分野で一つの世界を築いた人に経歴を尋ねるなんて、無粋なんだと思います。

このような素敵な本をそっと開いて、その世界をちょっと垣間見るのが丁度いいんです。

聞き手:宮智泉さん

「あとがき」の率直かつシンプルな語りに感動しました。

読売新聞の編集委員の方です。本書の第一章「後ろ姿」は、読売新聞朝刊の連載「時代の証言者」が元になっているんです。

20年近く家庭欄を担当。生活やファッション、女性などのテーマで記事を執筆してきたベテランです。

日本のファッション業界華やかなりし頃も見てきたけれど、バブルの崩壊を機にこの業界が活気を欠いてゆくと、「海外コレクションの取材に行かせてほしい」と上司に願い出、1996年のパリコレを取材。願い出の背景には、「パリコレを見に行くといい。日本とは全く違って、ファッションが文化として認められている。」という三宅一生さんや森英恵さんの助言があったそうです。実際、会場の真ん中には欧米陣、日本人は端に追いやられて席ももらえず…という状況だったとか。また、当時欧米の一流紙にあって日本の新聞になかったのがファション欄で、これがコレクション取材を願い出る大きな理由だったとのこと。

そして、「世界の中で日本はどうあるのがよいか」をファッションを通して考えるようになったそうです。また、品質はいいのに世界で勝負できない日本の物作りを応援したいと思ったそうです。カリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム大学院講師だったこともあります。

↓こちら、1996年の「Yohji Yamamoto POUR HOMME」コレクションにインスパイアされて作られたYohji Yamamotoの作品です(2020年の記事)。宮智泉さんの1996年パリコレ取材時のランウェイは、このようなデザインだったのでしょうか。

jp.fashionnetwork.com

↓宮智泉さんの母校での講演記事
ichoukai.sakura.ne.jp

装丁&本文レイアウト:細野綾子さん

『服を作る』にて、即席の本とは一線を画することを、私に証明してくれた表紙の作り手です。

公式ページには

1983年アメリカに移住。ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒業後、活版印刷を学び、活字や装丁に興味を持つ。2001年帰国。

とあります。

muonfminor.tumblr.com
文学、音楽、歴史、小説…。『服を作る』に通ずるテイストの表紙もちらほら。

2011年以降の作品(の一部?)はInstagramに、とあります。投稿は2020年のようです。

和紙仕様のカバー、かかりますよね?…費用…。私の『服を作る』は購入してもう何年も経ちますが、カバーがだんだんとこなれてきて、これまた良い感じなっています。装丁の制作秘話が聞けたらいいな、と思います(*^^*)

表紙写真:Thierry Bouët(ティエリー・ブエット)さん

フランス人のフォログラファー。法律を学んだ後、陸軍の軍属写真家としてキャリアをスタート。パリの有名老舗写真館スタジオ・アルクール(一般人も来るけれどセレブ御用達でもある)のディレクターなどを経て1983年に独立。「Vogue」や「 Marie-Claire」などの雑誌で活躍。(メイン?)分野はポートレートルポルタージュ。人も取り続けてきた写真家さんなのですね。
www.thierrybouet.com

『服を作る』の表紙写真(和紙仕様のカバーを外すと表れます。カバーから透けて見えます。)は、何か、えも言われぬ迫力に満ちていて、服づくりの場面にちょっと居合わせたような気持ちにさせてくれます。本文での山本耀司さんの語りとこの写真のリンク具合、すごいなと思います。ブラック=モード。Yohji Yamamotoの本だから「黒」が映える写真を選んだのでしょうか。…もっと違う意味合いがあるのかもしれませんが。ちなみに山本耀司さん、本書内「100の質問」で「黒は何色ありますか。」という質問に答えています。

増補新版

増補新版が発行されていたのですね。装丁は基本同じようですが、増補新版は著者名の位置を変えて「服を作る - モードを超えて 山本耀司」とタイトルにサインを添えるような感じになっています。目次も変わり20ページちょっと増えていますから、加筆したのだと思います。

*2013年発行版目次
1 後ろ姿
2 一〇〇の質問
3 服の作り方

*増補新版目次
1 後ろ姿
2 一〇〇の質問
3 手から出ていく魂
付録 服の作り方

「手から出ていく魂」…気になる…。

書籍情報

題名:『服を作る - モードを超えて』
著者:山本耀司
聞き手:宮智泉
版元: 中央公論新社
発行日:2013年5月25日
サイズ:四六判変型
頁:185頁
定価:1,500円+税
※2019年増補新版発行