Csunの日記

本好き📖*

実話に基づく素敵な絵本『バスラの図書館員ーイラクで本当にあった話』

2003年のイラク戦争が舞台の『バスラの図書館員』。本か雑誌で小さく紹介されていたのを、すぐに取り寄せました。

本を大事にする思いは、国を越えたらどのくらいの深さで違ってくるのだろう?本を大事にする思いを共有できたら嬉しいな、これらが本書を取り寄せる根底にあったような気がします。

バスラはどこ?どんなところ?
イラクの全体地図:パブリックドメイン

画像右下、赤マルの場所がバスラです。恥ずかしながら本書を機に場所を認識しました(^^;

ペルシャ湾に注ぐシャトル・アラブ川(アラビア語で「アラブ人の川」の意)の下流右岸にある港湾都市です。豊富な石油資源に農業も盛んで、ナツメヤシの産出量は世界でも有数。

1980年イラン・イラク戦争、1991年の湾岸戦争、本書の舞台2003年のイラク戦争で戦禍に巻き込まれました。

作者(絵と文):ジャネット ウィンターさん

NY在住の絵本作家。この絵本での紹介には「新しい伝記絵本の道を拓く」とありました。

例えば、2004年にノーベル平和賞受賞を受賞したワンガリ・マータイさん(「MOTTAINAI」を世界に広めたことでも有名ですね!)を描いた『ワンガリの平和の木』(BL出版、2010年)、米同時多発テロ発生前後のアフガニスタンにおける女性と教育について描いた『アフガニスタンのひみつの学校 ほんとうにあったおはなし』(さ・え・ら書房、2022年)などの著作があります。追々読んでみたいと思います。

訳:長田弘さん

長田さんだったのですね。教科書でもお馴染みの詩人さんです。

主人公:アリア・ムハンマド・バクルさん

イラクの女性図書館員さん。イラク戦争開戦当時、中央図書館の司書の責任者でした。つまりこの絵本の舞台は「バスラの中央図書館」です。

2003年3月イラク戦争が始まったその7月、
ニューヨークタイムズ紙にて「図書館から3万冊の本を避難させた」として
記事化されました。当時50歳。この記事が本書の基になっています。

ニューヨーク・タイムズの記事の内容は
こちら晶文社さんHP)

当時のイラク

2003年3月19日、ジョージ.W.ブッシュ大統領が「イラク自由作戦」を承認、
3月20日空爆により戦争勃発。

バスラは3月から5月にかけてイギリス軍とイラク軍間での戦闘地域になりました。

ネタバレ注意☆絵本のその後は?

絵本に描写されているように図書館は燃え落ちてしまうのですが…

「作者のおぼえがき」には、この後アリアさんは心臓の発作で倒れてしまったとあり、「いまでも療養中ですが、それでも、図書館の再建を見るまでは、というアリアさんの決意は揺るぎません。」と締めくくられています。

その後の記事で、図書館が無事再建されて病気から快復したアリアさんが、館長として元気に働いているとありました。今現在もこの図書館で働いているのかは不明ですが、避難させた3万冊の本は無事書架に戻り、アリアさんの夢のひとつが実現したことは間違いありません。

この実話を扱ったもう一つの本

『3万冊の本を救ったアリーヤさんの大作戦』
www.kokusho.co.jp

2012年、国書刊行会が刊行した漫画です。アメリカの漫画家兼児童文学作家の
マーク・アラン・スタマティー氏作、古代アラビア考古学と碑文学が専門の
徳永里砂さん訳。アメリカの作家さんが描いているところも興味深いです。

絵本が図書館再建の一助に
『バスラの図書館員』帯

こちらは私手持ちの第6刷分(2008年9月発行)。新しい帯には、アリアさんの写真が載っているそうです(o^^o)

書籍データ

題名:『バスラの図書館員』
作者:ジャネット ウィンター
訳者:長田弘
版元:晶文社
発行日:2006年4月10日